


作家の村上龍さんが亡くなられました。
村上さんの著書に『すべての男は消耗品である。』という、何とも刺激的な題名のエッセイ集があります。1980年代から長年にわたって書き続けられたシリーズで、私もかなり昔に読んだことがあります。
もっとも、読んだのは随分前のことですから、正直なところ内容はほとんど覚えていません。そもそも当時も、村上さんの言わんとすることを十分に理解できていたかと聞かれれば、甚だ心もとないところです。
ただ、男の生き方や女性との関係、社会のあり方などについて、独特の鋭い視点で語られていたことは記憶しています。
また、うわべだけの薄っぺらな人生を歩んできた人間は、厚みのある、地に足の着いた人生を送ってきた人には簡単に見破られてしまう。そんな趣旨のことも書かれていたように思います。もっとも、これも私の曖昧な記憶ですから、村上さんの本意とは違って
いるかもしれません。
そして今、改めてこの題名を眺めてみると、男は単に年を取れば役に立たなくなるという話ではなく、自ら考え、行動する力を失った時、人間は消耗品になってしまうのではないか。そんな問いかけのようにも思えてきます。
長年旅館を経営してきて感じるのは、人間は機械と違い、使えば使うほど減っていくばかりではないということです。経験を重ねることで得られる知恵もあれば、年齢を重ねて初めて見えてくるものもあります。
とはいえ、過去の経験だけに頼り、新しいことに挑戦しなくなれば、それこそ消耗品になってしまうのかもしれません。
私もそろそろ賞味期限が気になる年齢になりました。せめて使用期限だけは、もう少し先に延ばしたいものだと思う今日この頃です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
有馬館
館主 須藤 信晴