ブログ「宿主のひとりごと」

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2026/03/01 宿主のひとりごと 令和8年2月 new

先日、上山市の民俗行事の一つ「加勢鳥(カセドリ)」が開催されました。
この「加勢鳥」の発祥には諸説あります。
昔、上山で大火事があり、燃える城下町を城から見下ろすと、火喰い鳥が空を
舞っているように見えたことから、火伏せの意味で「鳥に水をかける」風習が
広まり、やがて民俗行事となったという説があります。
五穀豊穣、家運隆盛、商売繁盛を祈願する小正月の行事として、神の使いとさ
れる鳥に若者が扮して舞い踊る、伝統あるお祭りです。
藁で編んだ重い「ケンダイ」をまとい、真冬に冷水を浴びながら「カッカッ
カー」と囃して踊り続ける姿は、見る人の心を強く打ちます。
人々は水をかけて繁盛を願い、ご祝儀や酒でもてなします。
江戸時代には「御前加勢」と「町方加勢」が行われていましたが、明治期に一
度途絶え、昭和に復活しました。
現在は保存会の皆さまによって大切に受け継がれ、全国から参加者が集まる、
上山を代表する貴重な伝統行事となっています。
実は私も、若いころに「ケンダイ」をかぶって町を歩いた経験があります。
参加者が少なかった時代のことです。
当時は中にカッパを着てもよいとされており、私も透明なカッパを着て臨みま
した。
最初は何とかしのげるのですが、次第にカッパの中へ水が染み込み、顔にも容
赦なく水をかけられます。
下着も腹に巻いたさらしもびしょ濡れになり、外気の寒さと重なって、まさに
地獄のような体験でした。
寒さで心が折れそうになるので、とにかく「カッカッカー」と声を出し続けま
した。
声を出していなければ、きっと最後まで歩けなかったと思います。
今では、ほとんどの参加者が裸にさらしを巻き、短パン姿で臨んでいます。
見ているこちらが水をかけるのをためらうほどですが、参加者は年々増えてい
ます。
本当にありがたいことです。
遠方からの参加者を優先し、地元の人が裏方に回ることも多いと聞きます。
嬉しさと、ほんの少しの寂しさが入り混じるほど、この行事は立派に育ちまし
た。
私自身は今では見物する側ですが、あの冷たい水と、町の人々の熱気は、今も
身体が覚えています。
これから先も、この「加勢鳥」が長く受け継がれ、冬の上山の誇りとして在り
続けることを、心から願っております。
そして、この伝統ある町で宿を営む一人として、私たち有馬館もまた、地域と
ともに歩み続けたいと思う今日この頃です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有馬館
館主 須藤 信晴